リウマチに「性格」は関係ある?――かつて言われた“リウマチ気質”を医学的に考える
かつて医療の現場では「リウマチになりやすい性格がある」と言われることがありました。
実際、私のホームページにたどり着く検索キーワードでも、
- 「リウマチ 気質」
- 「リウマチ 性格」
といった言葉は非常に多く見られます。

今回は、この「リウマチ気質」という考え方について、現代医学・脳科学・東洋医学の視点から、少しだけ学術的に解説していきます。
■ 昔は「リウマチになりやすい性格」があると信じられていた
かつては、関節リウマチの患者さんには共通する“性格傾向”があると考えられていました。
- 几帳面で真面目
- 我慢強く、感情を抑え込みやすい
- 周囲に気を使いすぎる
このような傾向をまとめて 「リウマチ気質」 と呼び、性格と発症を結びつけようとした時代がありました。
私自身、20代の頃にはこの言葉をよく耳にした記憶があります。しかし、現代の医学研究が進むにつれ、この考え方は大きく変わっていきます。
■ 【現代医学の結論】リウマチは「性格で起きる病気」ではない
現在、関節リウマチは 自己免疫疾患 として明確に分類されています。
医学的に明らかになっている主な発症要因は、
- 遺伝的要素(HLA-DRB1 など)
- 環境因子(喫煙、ウイルス、腸内環境の乱れなど)
であり、
性格そのものがリウマチを引き起こす証拠はありません。
そのため、今の若いリウマチ専門医で「リウマチ気質」という言葉を使う人はほとんどいなくなっています。
■ しかし、痛みと感情(情動)は密接に関係している
ここで注目したいのは「痛みの感じ方」と「感情」の関係です。

近年の脳科学や慢性痛研究では、次のことが明らかになっています。
● ストレスや不安は“痛みを増幅”させる
ストレスが強いと、脳の扁桃体や前帯状皮質が過敏になり、
痛み信号を拡大して認識しやすくなります。
● 中枢性感作が起きると“刺激以上の痛み”を感じる
軽い刺激でも過剰に痛く感じる状態で、慢性痛の大きな原因です。
● 痛みと抑うつは互いに悪化させる
痛む → 不安になる → 緊張が高まる → さらに痛む
という悪循環が起こります。
つまり、
リウマチという“病気そのもの”は性格では起きない
しかし「痛みの強さ」や「症状のつらさ」には性格傾向やメンタルが深く関係する
というのが現在の科学的理解です。
■ 東洋医学では昔から「気質(性格)」と身体を関連づけてきた
東洋医学の基本には、
心と身体は一体 という考え方があります。
- 怒り → 肝
- 悩みすぎ → 脾(胃腸)
- 悲しみ → 肺
- 恐れ → 腎
このように、感情が内臓機能に影響を与えるという理論です。

リウマチのような慢性疾患では、
- 気の滞り
- 自律神経の乱れ
- ストレスによる気血の不調
が関節の腫れ・痛みとして表れることも少なくありません。
当院の鍼灸治療では、痛い部位だけでなく、
- 自律神経
- ストレス反応
- 気血水のバランス
も含めて全体の調整を行います。
これにより、「痛みの軽減」だけでなく「心の安定」にもつながります。
■ 結論:リウマチは“気質で発症する病気”ではない
しかし、気質が症状に影響することは確か
「私の性格のせいでリウマチになったのだろうか…」
そんなふうに自分を責める必要はまったくありません。
ですが、
- 自分のストレス傾向を知る
- 感情のクセを理解する
- 体と心のケアを日常に取り入れる
こうしたことは、リウマチと長く付き合ううえで非常に大切 です。
■ おわりに ― 痛みと心を整えるというアプローチ
医学は進歩し、「性格が病気をつくる」という単純な理解はすでに過去のものです。
しかし、
- 心の状態
- ストレス
- 感情のクセ
が体に影響を与えることは、科学的にも東洋医学的にも証明されています。
鍼灸は、心身両面に働きかけられる数少ない医療です。
リウマチでお悩みの方は、ぜひ「痛み」と「こころ」の関係をいっしょに整えていきましょう。
▼ 関連動画
以前YouTubeにアップした「リウマチ気質」の解説動画はこちら
