月に3人、同じ鍼灸院から移ってこられる患者さん
他の鍼灸院から当院にリウマチの患者さんが、転院されてきた。
「なんか違う」と感じたとのこと。
前に通院されていたという鍼灸院からは、リウマチに限らず、ちょくちょく患者さんが移ってこられます。多いときで月に3人来られたこともありました。
例に挙げれば、偏頭痛、メニエール病、パーキンソン病、突発性難聴、不妊などなど。
先月来院された方は、頭痛なのに手足に鍼を2,3本して終わり。頭の後ろが痛いと訴えても対応してくれなかったようで、院長ともめて、私の院に来られました。
この方の場合、後頭部の後頭下筋群という部分が問題だったので、手足に鍼を数ミリ入れただけで期待する効果を出すのは難しいと思います。
鍼灸のやり方ってどこも同じと思っていました
今回、移って来られた方もおっしゃっていましたが、「鍼灸治療はどこも同じやり方と思っていた」と話す方がとても多い。
僕の鍼灸院でのやり方と前に通院されていた鍼灸院と何が違うのでしょうか?
鍼灸治療のやり方というものは、大きく分ければ、「伝統鍼灸」「現代鍼灸」というものに分けられます。
私の鍼灸院の鍼治療のやり方は、現代医療に基づいた鍼灸治療を行ってますので、「現代鍼灸」になります。
鍼灸も最近の研究から分かってきたことが色々あります。論文もたくさん発表されています。
今は医学も発達したので、解剖学、生理学で説明できる現象も昔は、東洋哲学、陰陽五行論にあてはめて治療法を作りました。
リウマチの痛みや腫れは、神経やホルモン分泌なども大きく関係するのですが、そういう考えはありません。すべて、当時の自然哲学で考えられていました。
昔と今では、環境も大きく変わっています。
例えば、「睡眠不足」という症状で悩む人は、ほとんどいなかったと思います。
なぜなら、昔は電気がありません。日が暮れれば寝て、日の出とともに起きます。残業も庶民はありません。そのような環境で睡眠が不足した体の状態という考えはなかったはずです。
医学も進歩しているため、分かってきたこともたくさんあります。
何も、数百年も昔に戻り、過去の医学理論、考えだけにこだわる必要はありません。
積極的に、現代医学で分かったことを取り入れて、鍼やお灸を使って施術していけばいいじゃないでしょうか。
リウマチの変形・破壊をおさえる薬が登場
今年で見習い期間を入れて、この業界に入って26年になります。
私が20代の頃は、リウマチの治療でメトトレキサート(リウマトレックス・メトレート)や生物学的製剤はありませんでした。
当時のリウマチ患者さんたちは、変形を止める薬も関節を破壊する薬もないため、不安と失望感から鬱状態になる人や痛みで辛くなり、周囲に当たりまくっていた人もいました。
医学は大きく進歩しました。
1999年にメトトレキサート使用され、2002年には生物学的製剤の治療がスタートし、「リウマチは治る病気になった」患者さに説明する医師もいました。
しかし、徐々に薬の効き目が減った、副作用がでてきたという方が出てきました。
薬は「効く体の仕組み」になっていないなければ、効果を最大限に発揮することができません。
薬の副作用を抑える、関節の動き痛みをやわらげる鍼灸
薬の効果を発揮しやすい体を作ったり、内臓機能を高め、服用した薬を解毒し体外へ放出できる体作り、こういうものは、東洋医学・鍼の役目になります。
リウマチは関節の拘縮も起こります。そうなれば手を握ることもできないし、手を動かすたびに関連した筋肉に痛みがでてきます。その痛みを取るのも鍼治療は効果的です。
「古典・伝統系の鍼灸」の場合、筋緊張がある部分や痛みがある部位には鍼をせず、違う部分に鍼をすることがあります。これは、経絡の流れで考えるため、痛みが出た原因のツボに鍼をするためです。
別にどんなやり方でもよいのですが、やはり、ちゃんと痛み、こわばりがある筋肉にもしっかり鍼をしなければ効果はでないと僕は思います。
鍼灸の研究は進んでいます、患者さんを早く社会復帰させるためにも
「鍼灸」も今の時代、どんどん進化しています。
医学的に科学的に効果が高いとされるやり方も分かってきました。
僕自身も鍼灸師になりたての頃は、経絡治療や中医学の勉強会に参加していましたので、伝統鍼灸も効果はあると思いますが、リウマチの腫れ痛みが出ている方へは、エビデンスに基づいた鍼治療を行う必要があると考えています。
患者さんにとっては、よりはやく症状をよくして、日常生活に戻ることです。
何も昔の古典的なやり方にこだわらず、患者さんのためによりよい鍼灸のやり方を提供すればいいんじゃないでしょうか。